「連帯保証人がいるから債務整理はできない」と諦めていませんか?
私は元銀行員として1000件以上の融資審査を担当し、自らも650万円の借金から債務整理で立ち直った経験があります。その両方の視点から断言します。
連帯保証人がいても、正しい知識と手順があれば、保証人への迷惑を最小限に抑えながら債務整理は可能です。
実際、私が銀行員時代に見てきた事例では、事前の準備と交渉次第で保証人への請求を回避できたケースが数多くありました。一方で、何も知らずに手続きを進めて保証人に大きな迷惑をかけてしまった事例も少なくありません。
この記事では、銀行の内部事情を知り尽くした私が、連帯保証人への影響を最小化する具体的な3つのステップと交渉術を実例とともに詳しく解説します。
【結論】債務整理で連帯保証人への迷惑は避けられない。しかし最小化は可能
まず、厳しい現実からお伝えしなければなりません。債務整理を行う以上、連帯保証人への迷惑を完全にゼロにすることは極めて困難です。しかし、正しい知識と手順をもって臨めば、その影響を最小限に抑えることは十分に可能です。
元銀行員が語る「受任通知」が届いた瞬間の金融機関の動き
私が銀行員時代、融資担当部署にいた頃の話です。弁護士事務所から「受任通知」という一通の書類が届くと、私たちの動きは一変します。
受任通知とは、簡単に言えば「この方の借金問題は、これ以降すべて弁護士が窓口になります」という公式な通知です。
この通知が届いた瞬間の金融機関の動きを、時系列で具体的にお話ししましょう。
受任通知の内容を確認し、システムに「管理コード」を登録します。これにより、債務者本人への督促は完全にストップします。
融資ファイルが法務・管理部門へ移管されます。同時に、保証人への請求準備が機械的に開始されます。ここには担当者の感情が入る余地は一切ありません。
保証人宛に「ご通知」といった表題で、残債務全額の一括請求書が内容証明郵便などの記録が残る形で発送されます。
保証人へ電話連絡が入り、支払いについての協議が始まります。
このように、弁護士に依頼した時点で、保証人への請求はほぼ確定事項として事務的に進行するのです。この事実を知っておくことが、対策を立てる上での第一歩となります。
迷惑の度合いは「債務整理の方法」で決まる|3つの選択肢を数字で比較
債務整理には主に3つの方法があり、どれを選ぶかによって保証人への影響は天と地ほど変わります。私がFPとして相談を受けた事例の平均的な数値を基に比較してみましょう。
債務整理の方法 | 保証人への影響(請求額) | 支払いまでの猶予 | 交渉の余地 | 特徴 |
---|---|---|---|---|
任意整理 | ゼロにできる可能性あり | – | – | 保証人がいる債務を交渉対象から「除外」できる唯一の方法 |
個人再生 | 残債務の全額が一括請求される | ほぼない | 分割払いの交渉は可能 | 借金は大幅に減額されるが、その分が保証人に請求される |
自己破産 | 残債務の全額が一括請求される | 全くない | 分割払いの交渉は可能 | 借金は免責されるが、保証人の支払い義務は残る |
表を見れば明らかですが、保証人への影響を回避できる可能性があるのは「任意整理」だけです。この点を戦略の軸に据えることが極めて重要になります。

迷惑を最小限に抑えるための具体的な3ステップ戦略
では、具体的にどう行動すればよいのか。私の経験と知識から導き出した、最も効果的な3つのステップをご紹介します。
ステップ1:専門家へ相談する「前」に必ず保証人へ伝える
最も重要なのはタイミングです。弁護士に正式に依頼し、受任通知が送付される前に、必ずあなたの口から保証人に状況を説明してください。
私自身、多重債務で苦しんでいた頃、プライドが邪魔をして誰にも相談できず、状況を悪化させました。隠し続けることは精神的に大きな負担ですし、後で金融機関からの通知で知られるのが最悪のパターンです。
正直に話すことで、精神的な負担が軽くなるだけでなく、保証人と協力して問題解決にあたる体制を築くことができます。伝える際は、以下の3点を意識してください。
- 感謝: これまで保証人になってくれたことへの感謝を伝える。
- 謝罪: 迷惑をかける可能性について、誠心誠意謝罪する。
- 今後の見通し: なぜ債務整理が必要なのか、そして今後どう返済していくつもりなのか、具体的な計画を伝える。
ステップ2:「任意整理」を第一選択肢として交渉する
前述の通り、保証人がいる債務を交渉対象から外せる「任意整理」を第一選択肢として検討します。
例えば、A社(保証人あり/残50万円)、B社(保証人なし/残100万円)、C社(保証人なし/残80万円)の借金があったとします。この場合、弁護士には「A社は除外し、B社とC社のみ任意整理したい」と依頼します。
こうすれば、A社への返済はこれまで通り続けることになり、A社から保証人へ請求がいくことはありません。
銀行員視点で見ると、 金融機関側も、一部でも確実に返済が継続されるのであれば、交渉に応じやすい傾向があります。特に、これまで延滞なく返済してきた実績があれば、交渉は有利に進むでしょう。
ステップ3:保証人も含めた返済計画を立て、専門家と共有する
万が一、保証人がいる債務も整理せざるを得ない場合や、自己破産・個人再生しか選択肢がない場合でも、準備次第で影響は抑えられます。
その際は、保証人自身の収入や資産状況も考慮に入れた上で、保証人が債権者と分割返済の交渉をする準備を進めます。
私がFPとして担当した事例では、主債務者が個人再生に踏み切る前に、保証人である父親と連携。父親が金融機関と交渉し「月々3万円ずつなら支払える」という具体的な分割返済案を提示したことで、大きなトラブルなく軟着陸できたケースがあります。
重要なのは、主債務者と保証人が事前に情報を共有し、専門家を交えて一体となって対応策を練ることです。
元銀行員だからわかる「債権者(金融機関)」との交渉術
交渉を少しでも有利に進めるためには、相手、つまり金融機関の心理を知ることが不可欠です。
交渉のテーブルに着いてもらうための「誠実な情報開示」
私が融資審査担当として最も嫌っていたのは「不誠実な対応」です。情報を隠したり、嘘をついたりする相手とは、交渉のテーブルにすら着きたくないのが本音です。
逆に、事前に保証人へ正直に伝えていること、今後の返済計画に具体的な数字の裏付けがあることなど、誠実な姿勢を示す債務者に対しては、こちらも何とか力になれないかと考えるものです。誠実さは最大の交渉カードなのです。
「この条件なら回収可能」と思わせる返済計画の作り方
銀行員は「貸し倒れ(1円も回収できないこと)」を最も恐れます。具体的な数字で言うと、 100万円を貸し倒れる損失を取り返すには、金利3%なら約3,300万円もの新規融資を実行しなければなりません。
だからこそ、「全額は無理でも、この計画なら8割は回収できる」と思わせることができれば、交渉の余地が生まれるのです。
説得力のある返済計画には、家計の収支を明確にすることが不可欠です。以下のような簡易的なシートでも構いませんので、数字で示す準備をしましょう。
- 収入: 給与、その他収入
- 固定費: 家賃、水道光熱費、通信費
- 変動費: 食費、日用品費
- 差引額(返済可能額): 収入 – (固定費 + 変動費)
この「返済可能額」を基に具体的な返済プランを提示することが、交渉を有利に進める鍵となります。
どうしても自己破産・個人再生しか選択肢がない場合の最終手段
任意整理が難しく、保証人への請求が避けられない場合の対処法についてもお伝えします。
保証人も同時に債務整理を行うという選択肢
主債務者が自己破産や個人再生をすると、保証人に高額な一括請求が届き、支払いきれずに保証人まで債務整理に追い込まれる「連鎖倒産」は少なくありません。
これは最悪の事態に思えるかもしれませんが、見方を変えれば「共に経済的な再スタートを切るための一つの選択肢」と捉えることもできます。親子で同時に自己破産し、生活を立て直したケースも実際にあります。追い詰められた際は、保証人自身も弁護士に相談するという道を覚えておいてください。
保証人が請求された後の具体的な対処法
実際に保証人が金融機関から請求を受けた際は、パニックにならず、以下の手順で冷静に対処してください。
請求されている金額、支払期限を正確に把握します。
電話口で安易に「払えます」と答えてはいけません。まずは「内容を確認して折り返します」と伝え、時間を作りましょう。
すぐに主債務者と、依頼している弁護士に連絡し、状況を共有します。
保証人自身での対応が難しいと感じたら、ためらわずに保証人自身の名前で弁護士や司法書士に相談してください。
よくある質問(FAQ)
Q: 連帯保証人に内緒で債務整理はできますか?
A: 任意整理で保証人がいる借金を除外すれば、理論上は可能です。しかし、私の経験上、返済計画の変更などでいずれ知られるリスクが高く、発覚した際に関係が悪化するだけです。実務上は、正直に話すことが最善の策といえるでしょう。
Q: 保証人が支払いを拒否したらどうなりますか?
A: 連帯保証人には、主債務者に先に請求するよう主張する権利(催告の抗弁権、検索の抗弁権)が法律上ありません。支払いを拒否し続ければ、最終的に保証人の給与や財産が差し押さえられる可能性があります。これは銀行員時代に何度も見てきた厳しい現実です。
Q: 親が高齢で年金暮らしなのですが、それでも請求は行きますか?
A: はい、契約は契約ですので、年齢や収入状況に関わらず、法律に則って請求は行われます。私が銀行員だった頃も、心苦しいと思いながら事務的に請求手続きを進めるしかありませんでした。ただし、支払い能力がない場合は、保証人自身が債務整理を検討することになります。
Q: 奨学金の保証人になっている親に迷惑はかかりますか?
A: はい、奨学金も借金の一種です。自己破産や個人再生をすれば、保証人である親御さんに残額の一括請求が行きます。任意整理で奨学金は手続きの対象から外し、返済を続けるのが、迷惑をかけないための最も現実的な方法です。
Q: 離婚した元配偶者が連帯保証人です。連絡は必要ですか?
A: もちろん必要です。離婚によって夫婦関係は解消されても、連帯保証人としての契約上の義務はなくなりません。むしろ関係性が変わっているからこそ、より丁寧な説明と事前の相談が不可欠です。これを怠れば、後々大きな法的なトラブルに発展する可能性があります。
まとめ
連帯保証人への迷惑を完全にゼロにすることは、残念ながら不可能です。しかし、元銀行員としての私の知識と、債務整理を乗り越えた経験から断言できるのは、「正しい手順」を踏めば、その影響は最小限に抑えられるということです。
最後に、あなたが取るべき行動をまとめます。
- 現状把握: 誰がどの借金の保証人になっているか正確にリストアップする。
- 事前相談: 専門家に依頼する前に、あなたの口から保証人に誠実に状況を説明する。
- 専門家への依頼: 「任意整理」を軸に、保証人への影響を最小化する方針で弁護士・司法書士に相談する。
私もかつてプライドが邪魔をして相談が遅れ、事態を悪化させました。この記事で示したステップを参考に、まずは専門家への無料相談という「次の一歩」を踏み出してください。
それが、あなたと、あなたを信頼してくれた大切な保証人を守るための、最も確実な道なのです。